5.最後に

ここまで幸福な社会のモデルとして、幸福社会実現システムが機能している社会を考えてきました。社会システムとしては、もっといろいろ考えられると思います。ただし考案された社会システムが実際に機能するかどうかが問題で、具体的に考案、検討し、実験してみて、その結果を考察し、さらに検討することを繰り返しながらやっていく必要があるでしょう。また社会的なテーマであり社会実験を伴いますので、幸福を願う多くの人たちの協力がなければ、研究はできないと思います。人間社会科学研究所の実質が、人々の協力が得られ、様々な分野の研究者が連携し、人間幸福についての検討資料として広く世界に紹介できる研究ができる場になることを切に望みます。
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4.社会システムの実験例

といっても、まだ始めたばかりで発表する段階ではないのですが、社会システムの試みの具体例として紹介します。
私は人間という生きものに興味があり、また4歳の子どもを持つ父親の関心事ということもあって、研究テーマとして「子どもの成長とは」ということ考えたいと思っています。
子どもの成長については、現在までに様々な研究が行われています。またそれに基づく教育方法や実践方法もたくさんあります。しかし、子どもの成長や教育を考える上で、最終的にどういう人間像を目標にして子どもを育てようとしているのかを明らかにしておく必要があるのではないでしょうか。ここで目標とする人間像を考えてみた場合、人間として生まれてきたのであるから、どんな社会状況においても変わらない、人間らしい正常な姿があるのではないかと考えています。例えば、最近は国際的に通用する人になるためにとか、今の混乱した社会を生き抜けるようにとか、よく耳にしますが、それはいったいどういう人のことなのでしょうか。英語をしゃべられる、バイオリンが弾ける、学校の成績がよい、野球がうまい、友達がたくさんいるなど、確かにすばらしいことだと思いますが、そういう面だけで子どもが正常に育っていると言えるでしょうか。子どもらしい、人間らしい正常な姿とは、どういうものなのでしょうか。私は特に人間らしさの一面である知能や思考について焦点を当てて、《人間社会科学研究所》の会員としても研究してみたいと考えています。
さて、昨年秋に市民活動として《すずか子ども研究会》が設立され、私も参加しています。子ども研究会では、子どもの知能面、精神面、技能面、身体面、また個体レベルから社会的レベルまで、各成長段階において、様々な角度から研究することを目的としています。参加者も《日常生活・社会活動》の中から、例えば保育園や幼年部、学童保育などで実際に子どもにかかわっている人たちや母親・父親の立場から、子どもに関する現実的具体的な研究テーマを持ち寄って話し合い、検討しています。子どもに関して言えば、《保育園・学童保育》《子ども研究会》《人間社会科学研究所》という3つの要素が、どのようにしたら社会システムとして機能していくかを考えてみると、最も重要な点は、《子ども研究会》が教える・信じる方式ではなく、研究、検討されるかどうかにあると思います。研究会で検討し合う内容が、単に子育て理論や子育て方法を教えたり覚えたりして、それを実行するというのではなく、また《人間社会科学研究所》で行うより専門的な研究課題なども、参加者一人一人が納得のいくまで意見を出し合い、検討し究明することを通して見い出されたものが、実際に子どもと接するときに使いものになる質になるのではないかと思います。以前、子どもとのコミュニケーションについてのセミナーに参加したとき、講師の方が、「子どもの話をよく聞く事、聞いて共感することが一番大切です」と言っていました。そのことの意味や聞くとか共感するとはどういうことかを検討することもなしに、話をよく聞くぞ、共感するぞと思ってやっていても、本当に子どもの話を聞くことができるのか、共感することができるのか疑問が残ります。でも実際には、「こういうことが大事なんだって」とやろうとするが、あまり調べることをしないという例は案外多いのではないでしょうか。
すずか子ども研究会の会員の感想に、研究会に参加するようになって、子どもの中に入る前によく観察するようになった、自分はどういう子ども像を描いて子どもを保育しようとしているのかを考えるようになった、子どもの様子を見て思ったことを大人同士で話し合うだけでなく、子どもが実際どう考えて行動しているのかを子どもと話すようになったなど、何かしらの変化が見られるようです。研究会への参加がもたらすこのような変化がどういう実質のものなのか、また子どもにどのような影響を及ぼすのかということも今後の研究対象です。子どもの発育に対する大人環境の影響はとても大きいです。研究会で検討することを通して、大人自身も人間としての正常な見方、考え方をする練習をやりながら、子どもが正常な発育をするための理論を知り、具体的方法を実行することで、はじめて子どもにも有効な意味あるものになるのではないかと思います。
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3.幸福社会実現の社会システムの一案

社会システムとしてはいろいろ考えられると思いますが、今回は人間社会科学研究所設立のための研究会でも研究課題として検討してきた一案を紹介します。はじめに社会システムの3つの要素として《日常生活・社会活動》《研究会》《人間社会科学研究所》をあげておきます。
《人間社会科学研究所》では、人間や社会について本質から研究し、世界中の様々な研究機関とも交流・連携して、幸福な人生や社会を実現するための要素を解明します。そして解明された原理や理念が、人間の《日常生活・社会活動》に普及し生かされることが、この社会システムの目的であり、もっとも研究を要する部分であると考えています。つまり前述のように、研究、解明されたことを《日常生活・社会活動》に生かす方法やシステムが機能していないことが、様々な社会問題を産み出し、未だ幸福な社会とは言えない現状の原因になっていると思われるからです。例えば、授業で先生がこう言っていたからとか、専門書にこう書かれてあったからでは、原理や理念を知識としては理解できていても、その人の中で‘生きている状態’かどうかわからないでしょう。どんなに正しいと言われていることでも、心底からの理解のないまま、それを信じきって指針として行動したり考えている状態は、自由な意思や心を持った人間にとって、無理があると考えられます。本当の理解のないものを指針や規範にして組み立てた社会組織は、人間向きの社会ではなく、それを無理に当てはめていることが間違いごとの生ずる原因になっているのではないでしょうか。
この社会システムでは《研究会》が重要な位置にあると考えています。《研究会》は《日常生活・社会活動》の中から具体的テーマを抽出し、専門ごとに持ち寄り、活動家、実際家や研究所研究員も研究会の一員として参加して研究する場です。《人間社会科学研究所》や《研究会》では、今まで多くの学びの場で採用されてきた‘教える、覚える、信じる方式’ではなく、誰のどんな意見でも正しいとか間違っているとかと決めつけず、本当はどうかとどこまでも調べ検討します。《研究会》で具体的に様々な角度から納得の行くまで検討し、参加者が原理や理念を本当に理解し知ることで、参加者をとりまく《日常生活・社会活動》の中に原理や理念が生かされるのではないかと考えています。そういう状態になったとき、私たちの《日常生活・社会活動》は、実際どのようなものになるでしょうか。国家や組織を運営する場合にも、会社を経営するにも労働するにも、また子どもを育てるにも、そういう具体的な生活、活動の中身が、人間としての幸福要素を満たしている状態になるかどうかが、この社会システムの研究課題になるでしょう。《人間社会科学研究所》と《研究会》が連携することで、人間の幸福に関するあらゆる要素が解明されつつ、原理や理念と実際が結びついて、それが《日常生活・社会活動》に現れてくる社会システムです。
次はその社会システムの実験例を紹介しようと思います。
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2.幸福社会実現システムが機能している社会とは

人間の幸福については多くの意見があり、深く検討する必要性を感じますが、一応ここでは簡単に「人間が人間として人間らしい生活をする、人間をとりまく自然環境とも無理なく調和して永続性のある暮らしを営んでいる」というような表現をしてみます。そこでまず第一に必要になるのは、人間とは?人間社会とは?本来どういうものなのだろうかということを究明し明らかにすることだと思います。人間や人間社会について、本来とか正常とかと言えるような姿が解明されることがなければ、人間らしい無理のない社会は実現できないでしょう。次に、その解明された人間像や社会像、または原理や理念とかいったものが、人間の実際の生活や活動の中に普及していく段階があると思います。この普及する方法についても研究が必要で、この方法が幸福社会実現システムの根幹をなすと言っても過言ではないでしょう。ある面、人間や社会については、現在までにかなりの研究がなされてきていると思うのですが、また様々な方法で実現をはかっているのでしょうが、幸福な社会を実現するという点で未だ十分な効果が得られていないと思われるのはなぜでしょうか。その理由の一つは、研究により解明された原理や理念がうまく人間や社会に役立たされていない、つまり人間自身の中に‘生きていない’からで、そのための方法がうまく機能していないのが原因ではないかと思われます。原理や理念を頭では理解できていたとしても、人間そのもの、社会そのもの、世界そのものが見えていない状態と言うか。例えば平和を願っているのに、戦争を繰り返す人間の行為もそういうことが原因になっているのではないでしょうか。一方、社会システムが機能している社会とは、人間が原理や理念を本当に知り得ることで、人間同士や人間をとりまく万物との関連が見えて、お互い生かし合って、人間自身と人間を含めた自然界との調和が保たれている社会、とでも表現できるでしょうか。
ではそのような社会システムとしては、どのようなものが考えられるでしょう。
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1.幸福社会実現のための社会モデルについて

事業活動について勉強しているときに経営の本に書かれてあったのですが、事業を成功させるポイントは、事業計画や事業モデルをいかに組み立てるかにある、ということが印象に残りました。事業ですから、儲けるためのものではあるのですが、いかに熱意を持って商品を売って儲けるかということだけでなく、儲かるための方式の考案であり、そういう方式が考案できれば、つまり儲かる方式、システムを有する事業自体が商品化できるという内容です。そのシステムを採用すれば、誰でもどこでも簡単に儲けることができる訳です。まあフランチャイズ方式みたいなものですね。しかしどこでも誰でも簡単にということは、かなり精巧なシステムでなければならず、そのシステムを考案するにはかなりの研究や調査、投資も必要でしょう。それができるかどうかが事業成功の鍵を握っているということです。うまいハンバーガーを作れる人はたくさんいるけど、マクドナルドのような事業システムを考案し世界中で展開できるかどうかとなると、まったく別問題ですね。
さてモデルということで、少しこじつけのようですが、幸福社会モデルについて考えてみると、自分の今までのイメージでは、そこに住む人々が純粋に幸せを願って暮らしている社会という感じで、そういう社会モデルがあれば、人々がそれを見たり感じたりしながら、社会全体が幸福な方向へ向いていくのだろうと思っていました。そういう面は確かにあると思います。しかしどうしてそう言えるのか、本当にそう思ってやっていたらなるのかと問われると、なんとなくそう思うが曖昧である自分に気づきました。そこで、そこからもう少し具体的に考えを進めてみると、人々が幸せに暮らす社会のモデル化というのは、幸福社会実現システムが機能している社会を考案するということではないかと思うのです。誰でも簡単に幸福になることができる、そういう社会システムについて研究し考案できれば、それこそ大儲け(世界平和の実現)できるのではないでしょうか。
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