2 自覚とは

第一章 人間の考え 2 自覚とは

 リンゴの状態があり、部屋の状態があり、それを自分の感覚で「甘いリンゴだ」「汚れた部屋だ」としている。これは、「自分が甘いと感じた」「自分が汚れていると思った」というのとは大きく違うと思います。自分が思ったこと、感じたことを「事実だ」としている。何気ないことのようですが、そこに「事実だ」とする思い込みやキメつけがないでしょうか。
 「自分の感覚であるとの自覚」がないことから来る思い込みやキメつけが日常生活の中でいかに多いか、自分や人の言動を観察すると面白いでしょう。
 ◯◯のラーメンは旨いとか、◯◯のお店は安い、◯◯さんは賢い、◯◯さんは働き者だ……。
 「自分の感覚であるとの自覚」がない人は、客観的事実を言っているつもりかもしれません。
 そうして、自分が甘いと感じたリンゴをすっぱいと言う人や、汚れていると思った部屋を綺麗だと言う人がいたら、その人をおかしい、間違っていると見なすのではないでしょうか。
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 「自分の考えであるとの自覚」が生まれると、それまで「事実だ・間違いだ・良いことだ」などとキメている「自分の状態」に気づいたりします。そうすると、それは「自分」が見たり・聞いたり・捉えたことや、「自分」が思い・考え・感じたことなどであり、「自分」のことであることが明らかになってくるでしょう。

 『SCIENZ 5号 サイエンズ入門』より抜粋
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