人の捉え方→自分の捉え方

第39回研究所サロン

 テーマ、 人の捉え方→自分の捉え方
        人は人、自分も人
        人を人として見る、自分を人として見る

 一、<実際の自分>と<意識される自分>
 二、<人(人そのもの・人の本体)>と<人の現象面>
 三、人と人で構成される社会(構想)
    人を尊重する社会、人を生かす社会、人情社会
 四、人には本来的な欲求がある
 五、人は人の中で人に育つ(人に成る)
 六、その人を理解する
 七、人の知性と自由
 八、人と社会システム

一、<実際の自分> と <意識される自分>

①今、自分を意識すると、何が意識されるか?
「自分は自分」というように他(周囲環境)からはっきり区別され、自分自体で完結している、そういう個体(個人)としての自分を意識する

②そのように意識するのは他でもないこの自分、自分がそのように捉えて、自分で自分という範囲を決めて意識している
自分でそう捉えて意識しているということのほかに、自分というものの根拠があるだろうか?・・
③自分と周囲環境との関連
少し自分から離れて、客観的に、上から自分を眺めるように見て、自分と周囲環境との関連を検べてみると、
身体も心も周囲環境との関連の中にあって、動いている、周囲環境から離れては生きていられない

④<意識される自分>  ≠ <実際の自分>
<実際の自分>     = 周囲環境との関連の中で生きている自分
<意識される自分>  = <実際の自分>の一部ないし一面が意識に上ったもの、自分で捉えた(決めた)自分

⑤人間の意識や認識には限界がある
実際の自分や、自分と周囲環境との関連について、知り尽くすことはできない

⑥ベンジャミン・リベットの自由意志と脳活動との関係に関する実験の紹介


二、<人(人そのもの・人の本体)> と <人の現象面> 
        《註、現象―本質に対して、表面的に現れた事柄》

① 人の現象面―人そのものが現れたもの
人間(自分)の感覚や考えや意識で捉えた人(自分) 

ex. ・人の言動(人の表面)
・人の能力・技術・知識・経験(言動に伴って表面化する)
・人の性格・気質・嗜好性(言動の傾向)
・人の気持・感情・思い・考え・欲求・意志・記憶(知情意・内面的現象)

②人の現象面(言動+内面的現象) ≠ 人(人そのもの・人の本体)
③人は、いろいろな能力や技術や知識や経験などの集合ではない

人の現象面をいくら寄せ集めても、人(そのもの)は見えない
人を人として見るとは?

④本来、人と人は比較できないもの、人そのものは評価できない

人の現象面しか見ない見方から、人と人を比較評価する見方が生まれる
人と人を比較する見方 + 価値観(上下・優劣・善悪)
→ 人の中の上下感・劣等感・差別感・対抗心・競争心
→ 社会の中の競争・対立・差別

その人を人として見ようとするなら、その人を人として理解しようとするなら、比較する観点を外して見なければならない。その時初めて、その人が人として、その人としての存在(本体)が浮かび上がってくるのではないか。


三、人と人で構成される社会(構想)

①社会は人と人で構成される

人には、人としてより良く生きようとするものがある
より良く生きようとする人と人が相寄って
より良く生きるための相談をして
より良く生きるための活動を始める
そこに社会が現れる、人と人で構成される社会が現れる
註、人が人として生きなければ(生かされなければ)、社会も生きていけない

②人と人で構成される社会は、人を尊重する社会、人を生かす社会

人としてより良く生きていこうとする人が集まって、より良く生きるための社会をつくり、その社会は人を人として尊重し、人を人として生かす

人を生かすとは、その人の能力や技術や知識経験を何かのために利用することではない
その人を人として、その人の丸ごとを、その人の存在(本体)を尊重して生かすということ、人として生かされてこそ、その人は幸せ

③人と人で構成される社会は、人情社会
人が人に対するときに、人の中に自然と湧き出てくるもの
それを捉えて人情とか親愛の情と言っているのではないか
人と人で構成される社会は、本来、人の中から人情が湧き出て、人と人の間に人情が通い合う人情社会ではないか

人と人で構成される社会―人を尊重する社会―人を生かす社会―人情社会


四、人には本来的な欲求がある

①本来的な欲求―人の中から本来的に湧いてくる欲求
            それは、意識される以前に、自然に心が求める方向
それは、人として生きようとする欲求
それは、人の本心
それは、人の自発性・主体性の元なるもの 

②本来的な欲求には三つの側面がある

1、身体的・生命的側面 ―生存の確保・環境への適応・食欲・性欲・睡眠欲・安全欲(危険回避)など
2、精神的・心理的側面 ―安心(心落ち着く)・満足(心豊か)・自由(心のびのび)・発揮(持ち味発揮・知性発揮・創造性発揮)を求める
3、社会的側面      ―人はひとりでは生きていけない、社会(群れ)を構成し、お互い調和して協力して生きる

③本来的な欲求においては、「より良く」という方向があるのではないか

物も豊かで、安心して、自由にのびのびと、心のおもむくままに、自分の持ち味や知性を大いに発揮して、明るく楽しく、誰とでも親しく、心も満たされ、心豊かに生きる

本当は身体も心もそのように欲しているのではないか
人はそのように成ろうとしているのではないか
人は、人としてより良く生きようとしているのではないか
人が生きる目的は、どうもその辺にありそう・・

④人が生きる目的→本来的な欲求(心底・本心)→言動(手段)→社会(手段)

⑤人と人で構成される社会
人を尊重する社会
人を生かす社会
人が生きる目的に適う社会
人の本来的な欲求(本心)が満たされる社会
人と人が本心で生き合う社会


五、人は、人の中で人に育つ(人に成る)

人は、①人との関係の中で、②人の世話を受け、③人を真似て育つ(人に成る)

①人は、人との関係の中で育つ(人に成る)

心の成長(心の形成)―(主に)他の人との関係の中で成長する

欲求や意志・感情や気持・考え方や捉え方など、他の人との関係の中で形成される(もちろん遺伝的要素をベースにしてのことだが・・)
人との関係の中で、人らしい感情や気持・人らしい欲求や意志、人らしい考え方や捉え方が育つ

②人は、人の世話を受けて育つ(人に成る)
③人は、人を真似て育つ(人に成る)

1、人には、人を真似る(模倣する)能力がある
人の表情(微笑み、舌を出す)を真似る、人の動作(歩く、手をたたく、踊る、道具《スプーン・鉛筆・椅子など》を使う)を真似る、言葉の習得も、先ずは、親の言葉(音声)を真似るところから、

2、人は、人を真似るようにできている(無意識的に真似る)
共同注意―他人が見ているところ、もしくは指示しているところを見ること
共鳴動作―意図せずに反射的に相手と同じ行動を取ってしまう
言葉の習得―物事の捉え方や意味付けの仕方を真似る・写し取る
人は、①人との関係の中で、②人の世話を受け、③人を真似て育つ
つまり
④人は身体も心も、人との関係の中で、受けた(吸収した)ものでできている
   
人が育つプロセスにどれだけのものが関与しているか、計り知れないものがある
人が受けた(吸収した)ものの総量は計り知れないものがある
そういうプロセスを経ての今のその人(自分)
そういう中身を持つ今のその人(自分)

目に見える部分より、形のないものに本当の価値がある

図、大海に浮かぶ小島、目に見える部分はほんのわずかだが、それは氷山の一角で、全体は膨大なもの。目に見える(意識される)ところの人というもの、人の姿・形はちっぽけなものだが、人を人として在らしめている形の無いもの、生まれてから、生まれる前から、今現在に至るまでにその人が受けたものの総量は、膨大なものだ。

人の目に見える、人に意識される、人に捉えられる部分よりも、形の無いもの、受けたもので形成された人の中身(本質)にこそ本当の価値がある


六、その人を理解する

①その人を理解するとは?
その人の何を理解するのか? 

その人の言動を理解することか?
その人の性格や傾向を理解することか?
その人の中の、今の気持や考えや意志を理解することか?
その人の今の考え方を理解することか?
その人の今の心の状態を理解することか?
その人の今に至る過程や背景を理解することか?

どこまで行ったら、その人を理解したことになるのだろうか?
どこまで行っても、その人を理解しつくすことはできないのではないか
人は人の理解をいつも超えている、自分は自分の理解をいつも超えている、そういう存在ではないか

②人と人が理解し合うプロセス
人と人が共に暮らす、人と人が共に話し合う、それは人と人が理解し合っていくプロセス
理解し合うプロセスを楽しむ、それは人と付き合う面白さ、人生における楽しみのひとつ、

註、「自分はこうだ」「あなたはこうだ」「あの人はこうだ」とするものがあると理解は一向に進まない、人生を楽しめない


七、人の知性と自由

①人の知性は、より良く生きるためにある

人は生まれたときから、知ること(真似ること)を始め、一生知り続ける
知ることで周囲環境(自然や人や社会)と調和し適応し、より良く生きることができる
人の中のより良く生きようとする本来的な欲求が知性を動かす
観察も理解も思索も創造も、知ろうとするところから始まる

知ることで、
より成長する・より安全になる・より安心する・より満足する・より豊かに暮らせる・より自由になる・より調和する・より親しくなる・より発揮される・より明るくなる・・
人の日々の活動は、本来、より良く生きるために知性を発揮する活動ではないか

②人の自由(人ならではの自由)とは
より良く生きることができる自由、つまり、知性を発揮する自由

何かを真に知ろうとしている人は、より良く生きようとしている人
知ることは、より良きを願って、より良き方向に変化することであり、成長することであり、変化や成長のないところに知は存在しない
知ることで、自分の行動を・自分の考えを・自分の気持を・自分の本心を・自分の価値観を・自分の人格を・自分の人生を、自分の社会を見直せる、そして変更できる

③ 知性の本質は、物事(人や社会や自然)について、本質的なもの(本来的なもの)を探りながら、見出して、知っていくこと

④人間にとっての本質的なもの(本来的もの)とは
人を、人として人らしく、自然や社会の中で生かす方向のもの
それを知ってこそ、人はより良く生きれるというもの
本質的なことを知らないことは不自由

⑤知性の自由とは、
人の本来性(本来的な欲求が満たされること=安心満足発揮協力=正常健康)に伸展合適する自由


八、人と社会システム

①人は社会システムの中で育ち、社会システムにそって考え行動する

ここで言う社会システムとは
社会においてシステム化された行動(活動)様式や思考様式
社会において習慣化された、ないしは制度化された思考様式や行動様式
たとえば学校教育制度など・・

註、システムー体系。また、秩序・系統だった組織・制度

②人が社会システムを作り、その社会システムの中で人が作られる(育つ)
人の知情意や言動すべて、社会システムの影響を受けて形成される。人の中の人間観・社会観・人生観・世界観・価値観・善悪観など、さらにはその人の人間関係なども社会システムの影響を受けて形成される

③ゆるい(やわらかい)社会システムと硬い社会システム
人間は物や機械と違って自由意志を持つとはいえ、硬い社会システムの中で人は自ずと、システムに合わせて動くように観念付けられる、つまり人が作った社会システムに人が縛られるという現象が今の社会では多く見られる。

④今このような自分であるのは、社会システムの所為だ(あるいは御蔭だ)
⑤人がより良く生きるための、より楽しく自由に暮らせるための社会システムの創造

社会システムにも、道路・水路に比すべきものを設け、何れを通るも各人の自由選択に任し、決してその人の意志を妨げない、そういう、人を縛らず、人が生きやすく暮らしやすくなるためだけの社会システムも可能ではないか

⑥人が、人として尊重され、人として生かされ、その人の持ち味や知性や人情(親愛の情)が、発露し発揮される、そのような社会システムとは?

アズワンコミュニティーにおける社会システムは、その実験?・・
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