3.幸福社会実現の社会システムの一案

社会システムとしてはいろいろ考えられると思いますが、今回は人間社会科学研究所設立のための研究会でも研究課題として検討してきた一案を紹介します。はじめに社会システムの3つの要素として《日常生活・社会活動》《研究会》《人間社会科学研究所》をあげておきます。
《人間社会科学研究所》では、人間や社会について本質から研究し、世界中の様々な研究機関とも交流・連携して、幸福な人生や社会を実現するための要素を解明します。そして解明された原理や理念が、人間の《日常生活・社会活動》に普及し生かされることが、この社会システムの目的であり、もっとも研究を要する部分であると考えています。つまり前述のように、研究、解明されたことを《日常生活・社会活動》に生かす方法やシステムが機能していないことが、様々な社会問題を産み出し、未だ幸福な社会とは言えない現状の原因になっていると思われるからです。例えば、授業で先生がこう言っていたからとか、専門書にこう書かれてあったからでは、原理や理念を知識としては理解できていても、その人の中で‘生きている状態’かどうかわからないでしょう。どんなに正しいと言われていることでも、心底からの理解のないまま、それを信じきって指針として行動したり考えている状態は、自由な意思や心を持った人間にとって、無理があると考えられます。本当の理解のないものを指針や規範にして組み立てた社会組織は、人間向きの社会ではなく、それを無理に当てはめていることが間違いごとの生ずる原因になっているのではないでしょうか。
この社会システムでは《研究会》が重要な位置にあると考えています。《研究会》は《日常生活・社会活動》の中から具体的テーマを抽出し、専門ごとに持ち寄り、活動家、実際家や研究所研究員も研究会の一員として参加して研究する場です。《人間社会科学研究所》や《研究会》では、今まで多くの学びの場で採用されてきた‘教える、覚える、信じる方式’ではなく、誰のどんな意見でも正しいとか間違っているとかと決めつけず、本当はどうかとどこまでも調べ検討します。《研究会》で具体的に様々な角度から納得の行くまで検討し、参加者が原理や理念を本当に理解し知ることで、参加者をとりまく《日常生活・社会活動》の中に原理や理念が生かされるのではないかと考えています。そういう状態になったとき、私たちの《日常生活・社会活動》は、実際どのようなものになるでしょうか。国家や組織を運営する場合にも、会社を経営するにも労働するにも、また子どもを育てるにも、そういう具体的な生活、活動の中身が、人間としての幸福要素を満たしている状態になるかどうかが、この社会システムの研究課題になるでしょう。《人間社会科学研究所》と《研究会》が連携することで、人間の幸福に関するあらゆる要素が解明されつつ、原理や理念と実際が結びついて、それが《日常生活・社会活動》に現れてくる社会システムです。
次はその社会システムの実験例を紹介しようと思います。
幸福社会実現のための社会モデル | - | -