問題を解消するための方法についての覚書 Ⅲ

内観法を体験することで「自分や他人を客観視できるようになる」とはよく言われることだ。そこには内観法(体験)の中でのどういう面(要素)が作用しているのだろうか。その辺を押さえて内観に取組むならば、自分や他人を客観視できる能力をより効果的に養うことができるのではないかと思う。

改めて内観法の身近な人に対する自分を検べるテーマ、すなわち①お世話になったこと②して返したこと③迷惑かけたことという三つのテーマに着目してみると、どれも自分の方を見て検べるテーマだが、あくまで実際にあった具体的なこと(場面)を思いおこしながら検べていくことが求められる。自分(のこと)だけを見るというより実際のこと(場面・客観)の中での自分を見ようする。そこに徹して集中することで、自分をも客観視しようとする方向に向かう。何かそのように仕組まれているといえるのではないか。

さらに、この三つのテーマで身近な人に対する自分を次々と見て検べていくことで、それぞれの人との関係ということにとどまらないで、自分自身の生い立ちや自分という存在の成り立ちが知れてくる。自分ひとりで育ったわけではない。自分ひとりで今存在しているわけではない。周囲の人たちや物があってこそ今の自分があるという認識に立つ。それはとりもなおさず、自分を客観の中に置いて見るということではないか。自分が自分がと大きくなっていた主観(思い・感情・判断)から抜け出て、客観の中にいる自分を見出す。

そうなると自分の主観(強い思いや感情)をも、自分から放して客観的に見れるようになってくる。強い思いや感情も何か薄らいでいくのを感じる。自ずと今まで心に抱いていたわだかまりも溶けていく。そういう方向が出てくる。そこで初めてそれがどういうことであったのかと検べていける。それが、内観コースの参加者が身を持って体験するプロセスといってもいいのではないだろうか。
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