1st CSS 2「なぜ、今家族農業か?」




 関根佳恵(愛知学院大学経済学部准教授、SSFNJ呼びかけ人代表)

【First half】
“なぜ、今家族農業か?”
“世界の農業生産量の8割は小規模農業、家族農業が占めている”



前半は、関根さんが研究されている農業経済の中から、小規模農業、家族農業についての現状や課題を出してもらい、セッションが展開された。
関根さんの研究活動について、詳しくは以下を参考に。
https://www.sffnj.net/
https://www.sffnj.net/study-guide
関根:国際連合は、2011年の国連総会において、世界の飢餓撲滅と天然資源の保全において、家族農業が大きな可能性を有していることを強調するため、2014年を国際家族農業年として定めた。
 私は、2012〜2013国連の報告書の作成にかかわり、その全訳『家族農業が世界の未来を拓く』を2014年農文協より発刊した。
 また呼びかけ人代表として、SSFNJ(小規模・家族農業ネットワーク・ジャパン)を、起ち上げた。
 2018年4月より1年間、ローマに本部のあるFAO(国連イタリア食糧農業機関)にて、地理的表示の部署で研究をすることになっている。
 FAOを拠点に、日本とフランスの農業形態の推移などから、世界の農業分析をを行うWAW(World Agricultute Watch)というプロジェクトがあり、そこにも関わろうと考えている。
 小規模農業、家族農業が大事だと言っても実際にどのような支援が家族農業の為に必要なのか?
 家族農業の実態を把握し支援の在り方を探り、具体的にどうすればいいかということを研究者は言わなくてはならないと思う。
 特に日本には国際的な動きが入ってこない。
 ローマに行って、情報をつかんで、日本国内外に発信していきたい。


 真保俊幸(サイエンズ研究所 産業獣医師)

 関根さんからの解説を聞き、参加者の多くが、「小規模農業、家族農業で世界の農業生産量の8割を占めている」という実態について、知らなかったこと、そして驚きであるという感想を述べた。
 産業獣医師として、農業の現場に触れている真保さんからも、中小畜産農家がこの10年間で数多く廃業していて、実感的には、大規模が増えているように思うがどうか?という問いや、スイスのように食料の安全保障を憲法に盛り込んでいるヨーロッパなどの国に対して、日本人の食料自給についての意識が相当低いのではないかという指摘などがあった。
 それに対して、今の流れでは、38%という国内の食料自給率が11%まで下がると予想されているが、国民の意識は楽観的で、今のように自動車などの工業製品を輸出し続けていれば、海外から食料は安全に輸入され続けるだろうと、思い込んでいるかも知れないという関根さんからの回答もあった。
 また、日本での農業後継者不足に関連して、鈴鹿コミュニティのSuzukafarm株式会社は、企業農業なのか、家族農業なのかという点について、中井さんの方から次のような発言があった。


 中井正信(Suzukafarm株式会社 理想の暮らしを語る会代表)

中井:国連の定義では、「農業労働力の過半が家族労働力でまかなわれている」とある。また、関根さんの資料には、
「家族農業とは人的繋がりによる社会集団であり」、
「企業農業とは資本的結合による社会集団である」。
となっており、対置している。
 この定義から言えば、人的繋がりによって成り立っているSuzukaFarmは、まさに家族農業と言える。
 近隣の農家さんに触れていて感ずるのは、日本の農業は仕事に追われ、盆も正月もない。家族でやらなければならず、休みも取れない。後継者がいないのは、そういう日本の家族農業に希望が持てないからではないか。
 家族的な繋がりのあるコミュニティの中での企業経営だと、毎日収穫したり、出荷したりは変わらなくとも、お互い休みも取りあったり、趣味や勉強研修などもやれて、将来性があるのではないかという気がしている。

関根:国連の定義では、法人の有無を問題にしていない。人的繋がりなのか、資本的結合なのか、実態を捉えるために、労働力を指標にしている。
 その点からいえば、Suzukafarmは家族農業に準ずると考えられる。
 血縁がない人での家族的なコミュニティをベースにした農業形態というのは、期待の持てる新しい道かも知れない。

 他にも地産地消のことなども、話し合われたが、関根さんの最後の一言に、研究者としての気概を感じたので挙げておく。



関根:研究者の仕事は、こういう政策がいいですよと言うだけでなく、それは何故ですかと問われたときに、理論的バックボーンや根拠を示すことです。そうしないと予算を付けて皆でやっていこうとはならないので、理論を組み立てていくことだと考えている。
 私自身は、日本の農業政策も小規模農業、家族農業、地域密着であるべきで、そうでなければ日本の農業は救われないと思っている。輸出を目指して農業規模を大きくしましょう、ロボットを入れましょうでは解決することではないと考えているが、残念ながら国は、そちらの方向に向かっていて、予算も補助金も大幅に回っている。
 そうした現状の中で、私たちが研究してきたことを国の政策に反映させるためには、世界の農業の流れを多くの人に伝えていくことも一つだが、ただ共感する人が増えても、国を動かすところまで行くのには弱いので、統計を用いたりデータを出しながら理論的にちゃんと示していく地道な研究蓄積が大事だと思っている。

(つづきます)

>>> 3 「人が学び育つ環境とは?」
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