6 「良いこと」「悪いこと」

第一章 人間の考え 6 「良いこと」「悪いこと」

 日常生活に大きな影響を及ぼしていると思うものに、道徳とか常識というものがあります。マナーとかモラルなどもこれに含まれるでしょう。法律や規則のように体系だって明文化されてはいなくても、子供の頃から躾けとか教育によって、道徳や常識を覚えていきます。
・・・・・
 日常生活において、「良いこと」「悪いこと」が占める位置はとても大きいです。できるだけ「良いこと」をして、「悪いこと」はしないようにする。行動の大きな基準になっているとも言えるでしょう。  
 それは、「自分が良いと思っているとの自覚」がなく、「良いこと」をやるのが良い、「悪いこと」をやるのは悪い、と思い込んでいるとも言えます。
 果たして、「良いこと」「悪いこと」というものが実際にあるのでしょうか。あるとしたら、どこにあるのでしょう。
・・・・・
 「善・悪」の基準は、人間の考えによるものだと思います。普遍的な根拠はないと思います。
・・・・・
 「善・悪」は、人間の考えにすぎないと思います。
 人間の考えといっても個人的なものではなく、多くの人が共通して考え、感じることによって、現実感、存在感が伴ってくるのです。「善・悪」もまた、集団による「観念上の事実化」の相乗作用によって生まれたものだと言えます。

 『SCIENZ 5号 サイエンズ入門』より抜粋
fb | - | -